3年連続の北海道自転車旅~函館へ行くも一昨年ほどの感動がなく…

五稜郭

2013年。

北海道を自転車で外周、内周してしまった僕は、今年は北海道に行くことはないだろうと思っていた。

 

この年ぼくは大学4年生で就職は決まっていない。

就職が中々決まらない中、7月がやってきた。

 

暑い。

相変わらずこの暑さはどうにかならないものか。

 

いや、何とかなる。

北海道に行けばいいのだ。

自転車とともに――。

 

フェリーからの眺め

 

「3年連続で来てしまったんだな」

 

いつも利用している新日本海フェリーで小樽港に到着したときに思った。

 

この日の小樽も例年通り夏とは思えない涼しさだった。

本州の蒸し暑さから逃れるために北海道を目指した僕は、早くも目標が達成してしまったのである。

 

小樽に着いたフェリーは夜に到着なのでこの日は小樽で野宿するとして、明日からはどうしよう……と悩んだ。

過去二年で北海道のほとんどの地域を回ってしまった僕は、今度こそ心の底から行きたい!と思う場所がなかったのだ。

 

後日、とりあえず自転車に乗って走ろうと思った。

目的地はなんとなく函館にした。

 

函館には一昨年も寄った。

そのときはたまたま横浜から旅している男性カブラーと出逢った。

カブラーというのは原付自転車のカブで旅する人のことである。

燃費のいい車種だそうだ。

 

ぼくは原付には乗らないのでサッパリ分からない。

だがあの時は乗り物は違えどそのカブラーと仲良くなり、男二人で函館山の夜景を見たあとその辺の居酒屋でビールを飲みまくったのち、函館ベイサイドで野宿した思い出がある。

あの時の思い出は凄い楽しいものとして残っている。

 

ビールで乾杯

 

そのおかげかは分からないが、函館という街は僕の中でお気に入りの街になっていた。

 

きっと面白いことがあるだろう。

 

それを胸に函館を目指した。

 

小樽から3日かけて函館に辿り着いた。

とりあえずご当地グルメでも食べようか。

一昨年喰ったラッキーピエロというB級グルメバーガーはめちゃくちゃ美味しかったなあ。

それともハセガワストアの焼き鳥弁当にしようかな。

隠し味に仕込んであるワイン風味のタレが焼き鳥と相性抜群で旨いんだよなあ。

せっかくここまで来たんだし両方喰うのもいいな。

 

両方喰ってからは街をぶらぶらした。

五稜郭に行った。

函館ベイサイドにも行った。

土方歳三の像の前ではお辞儀した。

 

しかし、一昨年来た時ほどの感動がない……。

 

函館の土方歳三像

 

 

前回来たときはラッキーピエロもハセガワストアも函館ベイサイドにも感動したのだが、今回はそれほどでもない。

前回来たときはひとつひとつのことが新鮮で、それが感動という形として刺激になっていたのだろう。

2回目の函館は前回で感動を経験しているからか知らないが、あまり感動しなかった。

 

そういや人間も歳を取るごとに感動がなくなる。

小さいころはなんでも興味を持てた。

ちょうど一昨年自転車で北海道を巡り巡った僕のように。

しかし慣れとは怖いもので、このことを知ってしまった瞬間からあの時と同じ感動は二度と手に入らないのなんだな、とも思った。

 

なんでもいえることだ。

思い出という荷物を背負ってないときのほうが、得たときの感動は大きい。

 

そう思ったときに俺は本当に北海道に上陸してよかったものかと考えたりもした。

 

避暑地としては言うことのない北海道ではあるが、もう北海道で得られるものはないのかも知れない。

就職活動のこともある。

もしかしたら小樽に戻って本州に帰って就職活動の続きを行った方がいいかもな。

 

帰るか。

 

すぐに帰れる距離ではないが、とりあえず小樽を目指そう。

そう思い、北へ北上した。

 

函館から国道5号線を北上する。

一昨年も走ったし今朝も走った何も見どころのない道だ。

アップダウンだけはあるのでひいひい言いながらペダルを漕いでいた。

 

疲れたので道中で休憩していると車から女性の人に声をかけられた。

若くてなかなか美人な人だ。

車のナンバーが『函館』なので恐らくは地元の人だろう。

 

車を運転する女性

 

会話の内容は、

 

「どこから来られたのですか?」

「大阪です」

「すごいですね!頑張ってください!」

 

と至ってシンプルで中身のない内容だ。

その人はそのまま車でどこかに行かれた。

 

当たり障りのない会話だったが、この年は旅の開始からなかなか人と話すタイミングがなかったので久しぶりの交流。

それも若く美人な人と話ができただけでテンションは上がり、にやにやしそうになった。

何もない道だけどこういう出逢いがあるから旅って面白いよな、と一人でのん気に思っていた。

 

が、そのときとんでもないことに気づいてしまった。

 

そうか、北海道の名所、名産、名物は変化しなくても、旅で出逢う人は毎回変わる。

以前行ったところが変化してなくてもそこで出逢う人は新しく、面白く、印象に残る人かも知れない。

 

そう思うとこの3度目の旅にも意義がある。

走ろう。

いままで走った道をリフレインするのもいいな。

 

そう思った僕は、この年も1ヵ月以上北海道を放浪することになったのだ。