自転車で九州一周を目指すも…フェリーで大阪へ帰った理由とは?

夏の道

ボロボロの折り畳み自転車をずっと乗っていたら、ある時親が懸賞で自転車を当てた。

LOUIS GARNEALの24段変速のマウンテンバイクである。

 

折り畳み自転車からルイガノに乗り換えた僕は長期休みを利用して自転車の旅に出た。

紀伊半島、しまなみ海道、山陽横断……いままで放浪した場所のほとんどが西日本だ。

それは、僕が住んでいるのが西日本の首都ともいえる大阪だからである。

 

あれは、2010年の夏だった。

大学一年生だった僕は大学生としての初めての夏休みをどのようにして過ごそうか悩んでいた。

この時点で近畿地方と四国地方は走っていたので、今度は九州でも一周するか、と思い九州を旅することを決意した。

 

九州までは大阪の南港や神戸からのフェリーで上陸することができる。

しかしあの時の僕は、フェリーよりも自力で九州まで行ったほうがカッコいい気がしたので陸路で九州まで行った。

 

ところが……

 

大阪から九州までは国道2号線一本で繋がっているので、そこを中心に走っていた。

道はなだらかでお店も多い。

交通量こそ多いものの多くの場所は歩道、路側帯が広く整備されているので走りやすく、走行に支障があるところはほとんどなかった。

 

ただ、あの時僕を苦しめたのは夏の暑さであった。

 

夏の道

 

夏の西日本というのははっきり言って死ぬほど暑い。

湿気があるので日中だけでなく夜中も暑くて寝苦しい夜が続く。

 

走っていると汗がぽたぽた落ちてくる。

喉が渇く。

お店で買ったスポーツドリンクは一時間でぬるくなって不味い。

 

そして最悪なのが身体が臭うことだ。

 

普通、自転車旅行する際には自転車にキャリアを付けて、そこにサイドバッグという自転車旅行専用のバッグを取り付けるのだが、独学で自転車旅行を始めようとした僕にそんな知識はなかった。

あのとき自転車で旅をしたときの装備は相当杜撰で、35L入る登山用ザックに思いつく限りの荷物を山ほどつめ込んだだけであった。

要するに背中が死ぬほど暑くて死ぬほど汗がでて死ぬほど臭かった。

 

風呂に入りたいなあ。

洗濯物洗いたいなあ。

 

と思うときは多々あった。

しかしそういう時は大抵風呂屋もコインランドリーも見当たらない。

 

そんな中で日が暮れたときは仕方なしに公園のベンチなり砂浜なりで寝る。

しかしテントを持っていなかった。

テントを持っていないと辛いのが蚊である。

 

蚊

 

夏の公園にも砂浜にも河川敷にも潜んでいる蚊は群れで襲いかかってくるので、一匹倒したところでキリがない。

 

刺されるのはまだいい。

耳元で囁かれる羽音。

疲れきってるのにそれのせいで寝付けないので、充分に体力の回復もできずにストレスが溜まった。

 

初めのころは我慢していたが一週間ぐらい経ち、痺れを切らした。

そのときは福岡にいたのだが、キャナルシティというショッピングモールの中に入っていたモンベルでテントを買ってしまった。

余計な荷物が増えて35Lの登山用ザックは更に重たくなったが、蚊帳替わりとして機能するテントは蚊の進撃から守ってくれて快適に眠ることができた。

 

蚊の問題は解決した。

しかし九州の暑さは依然どうしようもなく、身体が疲れ切っていた僕はそのまま福岡の新門司港まで行き名門大洋フェリーで大阪に帰ってしまった。

 

そのとき思った。

来年の夏は北へ行こう、と。